「ごめん、アサカ」
翌朝、帰って来るなり珍獣さんはあたしの部屋に無断で入ってきて、いきなり謝った。
「え、何のことですか」
寝起きで頭のはたらかないあたしは、寝ぼけ眼で聞いた。
何かされたっけ。
「おでこ、痛かった?」
そう言って珍獣さんはあたしの前髪を指でわさわさと分けてじぃーっと額を見つめた。
「ああ、大丈夫ですよ。赤いですか?」
「ちょっと、だけ」
そう言うと珍獣さんはがっくりとして項垂れた。
「いや、そんなに気にしないで下さい」
「……アサカ、おれ、嫌いにならない?」
布団の裾をいじくりながら尋ねてくる珍獣さんに笑みを零した。
「これくらいで嫌いになりません。
あたし珍獣さんのこと好きですよ?面白…―」
―がばっ
「!?」
面白くて、と言おうとするあたしに構わず、珍獣さんは抱きついてきた。
これにはさすがにびっくりするあたし。
だって、この体制はまるで……
…珍獣さんに押し倒されているようで。
ちょっと、いやかなり恥ずかしい!
「アサカぁー」
「ちょちょちょ、珍獣さんっ?
おおお起きて上がって下さい、ね!?」
むくり。
「アーサーカー…っ!」
「……えっと、」
どうしよう。
起き上がってはくれたものの、
珍獣さんはあたしをぬいぐるみか何かのようにだきしめて離してくれない。
「はあ……」
ため息をつきつつも、不思議といやだとは感じないあたし。
意外と、この人に飼い慣らされてるのかも知れない。
……なんて、実際の今の心境はお母さんみたいな感じだけど。