美女と珍獣



「あ、そうだ。アサカ、これ、あげる」

「何ですか…?って、鍵?」


合い鍵かな?

そう思って珍獣さんを見た。


「おれ、いないとき。それで、開けて」

「あ、はいっ!ありがとうございます」


あたしがそう言うと、満足そうに頷いて、そのまま珍獣さんは出かけてくると言い残しどこかへ行ってしまった。



というわけで。


いきなり一人になってしまったあたし。

別に行くところもないし。


屋敷内を散策してみることにした。

散策って言っても、どこに何があるのか見てみるだけだけど。



「それにしても広いなあ……」


ざっと見回すだけでも、あたしが今まで見てきた人が住む家の中で1番広い面積を誇る家。

こんなところに1人暮らしなんて、珍獣さんは贅沢が過ぎると思う。


っていうか掃除とかどうしてるんだろう。


……………。


考えてもわからないと悟ったあたしは、とりあえず一階から回ってみようと歩き出した。



今いるリビングが玄関から3番目のドアを入ったところだから、最初のドアから見てみることにした。







――二階の1番奥まで来る頃には、あたしはもうクタクタ。


予想以上にたくさんの部屋があることが分かった。


浴室がシャワー室も合わせて三つ。

トイレは四つ。

寝室が使ってそうなのと使ってなさそうなの合わせて六つ。

あとは倉庫とか、いろんな部屋があった。


家っていうより、寮とかホテルみたい。



「あと一室……」


あたしは最後の一個となったドアを暫く見つめて、徐にドアノブに手をかけた。