恋に惑う吸血鬼


『…わかんないなぁ』

「何がー??」

『ブ、ブン太!?』




…びっくりした。


まさか、ブン太が目の前にいるとは…。


声に出てないよね、大丈夫だよね??



「で、何が分かんねぇの??」

『え、えーっと…』

「悩み事があったらいつでも相談乗るからなっ!!」



ほら、危険なんかじゃないよ。


ブン太は優しいんだ。


耕介がきっと勘違いしてるだけ。




「おーい、弓弦??」




ブン太と会話していたことをすっかり忘れていた。



『あ、ごめんね。ボーッとしてたみたい。』

「そうだ、弓弦。」

『ん?』

「ハイ、これ」



ブン太に渡されたのはCDだった。



「今日、お前放送委員だろぃ??」

『…完全に忘れてた。リクエストね、了解!!』

「アホだなー、お前」

『なんか、いつの間にか授業も終わってたみたいだし、びっくり!!』

「弓弦…お前、本当に大丈夫か??」

『うん、ごめんね。早く行かなきゃ!!』



急いで鞄からお弁当を出して、放送室に向かう準備をする。



「…じゃあ、シクヨロ!!」

『うん、行ってきます』



ブン太と別れた際に一瞬、女子に囲まれた仁王君と目があった。



その時も、やっぱりニヤリと笑っていた。








「今日、放送聴いてたぜよ」

『…ありがとう』



今隣には仁王君がいる。


放課後、一緒に帰ろうと仁王君に誘われた。だけど、用事があるから無理だと私が言うと、何故か着いてきた。



「何処に行くん??」

『…CDショップに行きたかったんだけど、今日は辞める』

「なんで」

『…仁王君がいるから』

「ええよ、俺も一緒に行く」



嫌みのつもりで言ったのに、仁王君には通じないのだろうか。




――・・・




そして、私たちはCDショップに着いた。