恋に惑う吸血鬼



どうしよう……。




仁王君と目、合っちゃった。





「弓弦、こっち来んの??」





卑猥な事をしている所で鉢合わせするのって気まずいけど、こういう所で鉢合わせっていうのもかなり気まずいよね…。






あれ、これって気まずいとかの問題でも無い気がする。






……うむ。






適当に誤魔化して逃げよう…。





『に、仁王君。人居ると血吸い辛いんじゃない??うん、吸い辛いよね。じゃっ、また明日ね!!』





さ、来た道を折り返して帰ろうかな。





……あ、でもここまで来たんだしペンケースだけは持って帰らせて貰おうかな。





『に、仁王君!!最後にペンケースだけ取らせてね!!じゃっ』





仁王君まで私を哀れんだ目で見る気??






そんなことより、今度こそ帰ろう。






「ちょお、待ちんしゃい」






いつもより低い仁王君の声が響いた。







「さっき、《こっちに来ないのか》って訊いたよな??」

『いや、今日は遠慮しときます!!』





体の向きを変えて帰ろうとすると、何者かによって肩を掴まれた。








……なん、で??





……仁王君さっきまで教室の奥に居たじゃない。





……ここは廊下だよ、どうやって…??






……まさ、か…









……瞬間移動??