恋に惑う吸血鬼


『才色兼備の松本さんだよね。』

「才色兼備かは知らんが松本じゃなか。」



じゃあ、あのとき仁王君といた女子は誰??



『何言ってるの、松本さんは松本さんでしょ??』




仁王君は首を横に振る。




『何が違うの??』




緊張して生唾を飲み込む。




「アイツは松本じゃなくて松谷じゃ。」




え、松本じゃなくて松谷…。




『私、今までずっと松本さんだと…』

「いやぁ、面白かったぜよ。あの時、お前さん真剣な顔して俺を説教したじゃろ」

『……。』

「さすがに、あそこで本当の事は言うのは可哀想じゃったからのぅ」

『………。』

「真剣な顔で説教して、人の名前間違えるとか…ククッ」




アレ、仁王君ってSなのかな…。



あぁ、なんか恥ずかしくて涙出そう…。



『…Sだ、ドS。』

「何とでも言いんしゃい」



あ、まただ。



仁王君って…


ニヤりと笑うのが癖なのかな。




「ほら、はよ帰らんと。」

『う、うん。…あ、待ってよー』







――・・・







『送ってくれてありがと。』

「ええって。」

『これで2回目だね。そうだ、私まだ仁王君にお礼してないけど…決まった??』

「いや、まだ」

『そっかぁ。決まったらいつでも言ってね』

「おう」

『じゃあ、また明日』

「また明日、弓弦」



…また、頭をくしゃくしゃ撫でられてしまった。



何でこんなにペースを崩されちゃうのかな。