5組の教室にも人は残っていなかった。


彼を除いて。



「…成瀬くん」


「遅い」


椅子に座っていた成瀬くんは立ち上がり、鞄を私に渡して歩きだした。



一緒に帰るのが見つからないように、帰る時間を少し遅くしてもらった。


そのためか校舎にはあまり人が残っていない。



昼間の出来事が頭から離れない。


成瀬くんにとってはどうでもいいことかもしれないけど、私にとったら大事なことなんだよ。



「怒ってんの?」


「…べつに」


沈黙だった空気が成瀬くんの言葉によって破られる。


怒ってると言うより、へこんでるんだよ。