だから簾の向こうから暇を持て余した、貴族のお嬢さんに「こんにちは。お話しません?」なんて声をかけられる役人もいるが、貴族の姫が平民を本気で相手にするわけがない。ただの暇つぶしだ。



ある日、夜の見回りをしているときだった。


宮廷の庭を歩いていると人影が見えた。



「誰だ!」



「おっ!あいつでどうだ!シキ!

顔も怖くてイカツイぞ!」



「姫さま!お待ちくださいっ!」



庭にある二つの黒い陰が月明かりに照らされる。


その夜は満月だった。



「だれだお前は!」



「おい!お前!私の護衛をしろ!私は屋敷の外へ行きたい!お前はその間私達の護衛をするのじゃ!」



俺が月明かりの下で見たものはまだ年端もいかない少女だった。