電話越しの君へ



初めて見たときの彼を思い出す。




今でこそ皆慣れたが、
杉本は一見とても怖く見える。




彼が本気で睨めば
泣いてる子供だって黙っちゃうだろう。




「ま、敵には回したくないよね」




ひとり呟くと『だから何なんだよそれ』と彼はつっこんだ。




でも、そんなあんたの優しさとか可愛さとか、
ぜんぶ分かってるの私だけだと思うんだけどな。




「……ねぇ、その子が杉本のこと怖がってなきゃいいね?」




少し意地悪く言うと




『そんな女じゃねーよ』




ドスの効いた声が返ってきた。




「……うん。
じゃなきゃ杉本が好きになんてなってないよね」




……切ないなあ。




分かってても、あなたがその子をかばう度に泣きたいような気持ちになるよ。





しばらく話した後、私は電話を切った。