「ぶはっ!お前振られたの!えええマジで!」
「うっせぇ傷口掘り返すなし!…あああ。」

ちなみに俺、大原圭一が今喋っているのはクラスの友達。『負けなしだけが自慢のお前が…ぷぷぷぷ!』と腹を抱えて笑う、前田颯太と無言でため息を一つだけプレゼントしてくれた石井和則。(あ、これでも一応友達だよコイツら。慰めようともしてくんないけどな!)

「まずお前が長尾さんに手出すってトコで、無理だと俺は思った。」
「うっそ、ひでぇな和則!」

『あの長尾さんがお前みたいなん相手にするとは思わないだろ。』と付け足す和則。なぁ、それついさっき失恋した俺にかける言葉か?しかしながら、追い討ちは続く。

「あー…和ピーそれは俺も思ったよー。」
「誰が和ピーだ、しばくぞ。」
「ごめーんちゃい☆」

俺以上の馬鹿で、お調子者の颯太にまで同じことを言われるとは!もう穴があったら入りたい…!頭を抱える俺に、和則はこう言った。

「なぁ、そもそも何で長尾さん好きになったの?」
「なっ、何でもいいだろ…拷問かよ…!」
「まぁ関係ないしどうでもいいが…何で『あっちの長尾』じゃないのかと思ってな。」

和則の指差した方向に居たのは、俺がさっき失恋した女の子、『長尾さん』と同じ顔をした、けれどもずっと派手でスカートも短くてやかましい女子。う、相変わらず香水臭い。

「あのやかましい長尾さんの方がお前みたいなんは好みかと思ったが。」
「何でだよ!つかそんなに俺チャラく見えんの?!」
「うん。」
「ひどっ!」

ふざけんなよ、百歩譲ってチャラいのは認めたとしても何でギャルが好みってことになるんだ、先入観はいかんよ!プンプン。(あっ、俺キモい。)

「だーかーら、俺が好きなのは、控えめで天然で妹の方の長尾さんだ!」

―まわりくどい話をやめてズバッと言うと、つまり、長尾さんは双子であるのだ。