ピアス

 小母さんと別れ、わたしは秋江さんの家へ向かった。傘を返そうと思ったのだ。
 インターホンを鳴らしたが、誰も出てこない。何の物音もしない。聞こえてくるのは、激しい雨の音だけだ。
 傘を返すのは、明日でも問題はないだろう。
 どこかへ出かけているのかと思い、わたしは、門扉を引いた。
 その時だった。
 秋江さんの家の中で、何かが落ちる音がした。甲高いような、嫌な音だった。
 ふと、嫌な気配がして、わたしは慌てて裏に回った。お風呂場の窓が少し開いていて、中から煙と、かすかに血の匂いが漂ってきた。