ピアス

「こんにちは。」
「いつもの苹果?」
「えゝ、今日は秋江さんの誕生日ですから。」
 苹果の入った袋を見せる。
「もう幾つになるのかしらねぇ。」
「確か……成人だったと思います。」
「そう、おめでたいわねぇ。」
 小母さんは頷きながらしみじみと呟いた。
 秋江さんの小さい頃でも思い出しているのだろうか。
「明日は奈ッちゃんの誕生日でしょう。」
「えぇ、十四になります。」
「そう。いゝわねぇ。まだまだ若くて、人生これからって感じね?」
 わたしは、曖昧に頷いた。
「お母さんは、元気になさってるの?」
 再び頷くと、おばさんは目を細めて私を見た。
「いいわねぇ、仲のよい親子って。」
「まぁ……。」
 小母さんは何も知らない。わたしも話す義理はない。
 しばらく小母さんの世間話に付き合った。小母さんの話は、夫や娘への愚痴ばかりだった。