Dear 小林辰也様
今回、貴方様は我々が主催する“仮面舞踏会”に招待致します。
8/30(月) 21:00
京セラドーム前に集合です。
正装や仮面は我々がご準備致しますので必需品は何もございません。
貴方様もありふれた日常ばかりではなく、痺れるような快感に酔いしれてみては如何ですか?


From fox


「フォックス…キツネやないか。」


俺はある日の朝、いつも通り新聞を取ろうとポストへ行ったら、新聞と共にこのへんてこな手紙があった。
仮面舞踏会なんて阿呆やわ、ホンマ。


「あなた、どうしたの?」

「ん?ああ、保険のや。」

「そう、新聞は?」

「ちゃんとあるで。」

「ならさっさと家に入って、朝ご飯出来てるから。」

「分かった。」


俺は妻と家の中に戻った。
そう俺には妻と、


「パパ、おはよー!!」

ギュッ

「おはよう、春。」


最愛の娘がいる。
娘の春は、いつも朝の挨拶と共に俺の腰に抱きついてくる。
俺はこんな春が愛しくて仕方がなかった。


「あなた、ご飯冷めちゃうわ。」

「そやな、春もはよ食べや?」

「うん!!」


俺には大切な妻と娘がおんねん、やから痺れるような快感なんていらん。
そんなん俺には不必要やねん。
でも昔の俺やったら確実に行ってたな。
昔の俺はかなり不良やってん、地元の大阪じゃあそれなりに名前は有名で大阪が拠点のヤクザにもスカウトされたこともあった。
でも、そんな不良やった俺を救ってくれたのは今の妻である理子やった。
理子がいなかったらきっと、俺はいろんな人を傷つけながら生きてたんやろな…


「パパ?」

「ん?」

「パパ、どうしたの?」

「パパは大丈夫やで?」

「だってパパ、ボーってしてたよ?」

「ああ…ママとパパの昔思い出しててん。」

「あら、懐かしいわね。」

「はる聞きたい!!」

「そうね、近いうち話してあげる。」

「本当?やったーー!!」

「こら春!!朝から大声はダメよ?近所迷惑だから。」

「別に大丈夫やて、春だって嬉しいからやもんなぁ?」

「うん!!」