別荘に戻ってから考えるのはあの店員さんの事ばかり・・・。

店に入ればよかったなぁ

もっと話せばよかった

せめて名前でも聞けば・・・




何もやらなかったことに後悔ばかりする。



大きくため息をついていると


「なんだ??
久々に佳織がいると思ったら
すごいどんよりしたオーラが出てるよ??」


ドアからひょっこり出てきたのは叔母さんの楓ちゃん。

叔母さんって言うと怒られるからよく名前で呼ぶ。



楓ちゃんは、お父さんの姉で、
人気ブランドのデザイナーである。


よく思うけど、うちの家系って仕事で忙しいと思うのに
なんでそんなに暇があるんだ??


「はぁ~。」


いろんな思いが混じって、
溜め息となって出る。


「佳織、すごい顔してるぞ??
なんでもいいから楓さんに話してごらん??」


「・・・けなかった。」


「え??」



「何も聞けなかったぁ・・・。」


思いが込み上げてきて、
大粒の涙が目から流れた。


「あらまぁ・・・。」


楓ちゃんは呆れた感じで私の頭をなでる。