「ずっと捜してたんだよ。」
ハアハアと息を切らせながらそう言ったヒロトは自転車に跨り私を見下ろす。
まだ肌寒い5月。
夜の荒川に人けはほとんどない。
時折真っ暗闇の中を走るランナーの吐息だけが聞こえるが、明かりの無い川沿いは暗くてその姿までは見る事が出来ない。
川沿いに立ち並ぶ真新しいマンションの灯だけがかすかに河川敷を照らしていた。
「そんなトコに座ってないで、帰るぞ。」
うつむいて返事をしない私の腕を掴んだヒロトに
引き上げられた。
もう何度こんな風にしてもらっただろう。
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