普段の生活で、人が血を流す姿さえ、見慣れない光景なのに。


ここではそれが当たり前のように起きて、死さえ迫ってくる。


…怖くて、たまらない。


「…ごめんね。怖い思いさせちゃって」


アスティの優しい手のひらが、頭に触れた。


アスティのせいじゃないよ。


そう言いたかったのに、声が出ない。


「オレたちといることで、リオはもっと危険になるかもしれない」


アスティが、悲しそうに微笑む。


「身分の高い人を探して、その人にリオの手伝いをしてもらったほうが…」


「―――っいや!」


そこでやっと、あたしは声を出すことができた。


「そんなの、嫌だよ…!あたしは、みんなと一緒にいたい」


アスティ、エル…クリス。


この世界で、最初にできた友達。


それを手放すなんて…絶対に、できない。