当たり前だけど、そこには既にエルの姿はなかった。
「…はあっ…、どこ、行ったんだろ」
「うーん。エルのことだから、街中で堂々と殴り合いはしないだろうけど」
「な、殴り合いって…」
それにしても、結構な距離走ったのに。
アスティってば…全然疲れてないみたい。
「よし、あっちだ」
「え?分かるの?」
「カン」
「………」
あたしはがっくりと肩を落としたけど、それでもアスティの後に続いた。
どこへ行ったのかも分からない今、頼れるのは長年コンビを組んでいる(たぶん)アスティだけ。
アスティの進む道は、街の賑やかな通りとはかけ離れた、閑散とした道。
ポツリといる少数の人は、決して普通とは言い難い格好をしていた。
ボロボロに引き裂かれた服で身を包んでいたり、髪がボサボサだったり…裸足だったり。
「リオ、オレから離れないでね」
「…うん」
あたしはコクリと頷くと、アスティの服の裾をぎゅっと握った。