「魔術師フィオは、国王の側近であり、リオちゃんをこの世界に呼ぶ魔術をかけた張本人だ」
ほとんど無意識に、あたしはすっかり左手首に馴染んでしまった銀色のブレスレットを見た。
車にひかれそうになった黒猫を助けて、その猫がくわえていたブレスレットを何気なくつけてしまったのが、全ての始まり。
ここへ辿り着くまでに色々ありすぎて、遠い昔のように感じる。
「ただ、フィオは命令とはいえ、生け贄を呼ぶ手助けをしたことを後悔してたらしいんだ。だから、俺に助けを求めてきた」
オーガは申し訳なさそうに、あたしに微笑んだ。
「勝手だとは思うけど、リオちゃんとこの世界を救うことを、手伝わせてやって欲しい。今国王の一番近くにいるのは、俺よりフィオだしね」
「…あたしは…フィオって人がどんな人かは分からないけど。でも、力を貸してくれるなら嬉しいよ」
人を異世界へ導くほどの魔術師。…きっと、すごい人に違いないもんね。
あたしの答えに安心したように、オーガは「よし!」と言って両手を叩いた。
「ーーーじゃあ、本題に入ろうか」
既に用意してあったのか、オーガが机の下から大きな紙を取り出して、机に広げた。
覗き込んでみると、どうやら地図のようだった。
「これは、城内の地図だ。かなり複雑だけど、必要な場所はしっかり覚えて欲しい。まずは、ここ」
とん、とオーガが地図の一ヶ所を指差す。


