…って、何考えてんのあたし!
「い、いい天気だね!」
「……頭おかしくなったか」
やばい。何か意識したら、顔が熱い。
エルの顔なんて、もう見慣れてるはずだった。…なのに。
「まぁ…食われてなくて良かった。あとはアスティたち次第だな」
ゴツゴツと骨ばった手のひらが、あたしの頭をぐしゃっと撫でる。
見上げた先にいたエルは、呆れたように、でも優しく笑っていた。
「――――…」
胸がきゅうっと締め付けられて、声が出せなかった。
知らない。あたし、エルのこんな…男のひとの表情、知らない。
「…んだよ、そんなに怖かったのか?猛獣が」
あたしが無反応なのが面白くないのか、エルは顔を歪ませる。
途端にいつもの顔になって、あたしはハッとした。
「だ、大丈夫!ありがとう!」
こくこくと頷くと、エルは眉間にシワを寄せたままあたしをじっと見た。


