今になってようやく、恐怖の波が押し寄せる。
それに一人ぼっちだった不安も加わって、目頭が熱くなってきた。
「……うう~…」
「唸るな。はなれろアホ」
はぁ、と耳元でため息が聞こえる。
その温かい息があたしの耳をくすぐり、どくんと心臓が高鳴った。
………あ、れ?
あたし、もしかして…ものすっごく大胆な行動してる?
いやいやでも、これは助かったーっていう安堵のぎゅーだし。
でも安堵というより、逆に胸がドキドキしてるし…。
「おい。聞いてんのか」
「うん!?き、聞いてるよ!」
がばっと体を離すと、想像以上に近い位置に、エルの顔があった。
眉間にシワが寄ってるけど、よく見たら格好いいかもしれない。
琥珀色の力強い瞳が、エルの魅力をより引き立てている気がする。


