それもそうだろう。
自分の代わりに誰かが身代わりになって、平気でしていられる人間は少ないから。
「…オレたちは、オレたちにできることをやろう」
ね?と問い掛けると、リエラは唇を噛みしめつつも頷いた。
不安げな表情で、窓の外に視線を向ける。
「あの森には…危険な猛獣がいるの」
「え?」
「だから、だから…早くしないと、リオが…」
「―――――心配すんな」
ぎゅっと目を強く瞑ったリエラに、エルがそう言い切った。
自信を持ったエルの言葉は、いつも人の心にするりと入り込む。
「あいつには、少なからずこの俺が剣を教えたんだ。役立ててもらわねぇと」
「剣を…?」
「ああ。マントの下に隠し持ってるはずだ。一日ぐらいはなんとかなるだろ」
頭を掻いたエルを、リエラは目を丸くして見た。


