「もう…間に合わないじゃない」
腕時計が指す時間は、九時。
駅までまだ半分以上ある。
がっくりと肩を落とすと、足下で何かが光った。
「………?」
しゃがみこんで、光の正体を拾い上げる。
と、
「…ブレスレット」
綺麗な輝きを放った、ブレスレットだった。
そういえば、さっきの猫が何かくわえてたけど…これだったのかな?
「きれー…」
日の光を受け、銀色に輝くブレスレットを、あたしは何気なく腕につけてみた。
すると、驚いたことにピッタリとはまった。
「わぁ、すご…」
―――瞬間、ひどい耳鳴りがあたしを襲った。
「………っ、!?」
何だろう…この、感覚。
胸の奥がざわざわする…
突然、耳鳴りが止んだかと思えば、ブレスレットが熱を持ち始めた。
そしてその輝きが、徐々に増していく。
「何―――…!?」
光に目が眩んだ瞬間。
―――あたしは、闇の中にいた。


