すると、ジェイルの紺の瞳がフィオを捉えた。


「何だ」


「…っ、いえ!失礼致しましたっ!」


フィオは我に返ると、慌てて部屋を出た。


扉が閉まる音と共に、深く息を吐く。


「…このままじゃ、いけない」


ポツリと漏らした言葉は、広い廊下に溶けて消えた。


このまま例の少女が見つかり、捕まってしまったら…全てが、終わってしまう。


世界が救えたとしても、人の心は救えない。



…これは、自分に対しての罪滅ぼしでもあった。


「ごめんな、マーサ…」


フィオはぐっと拳を握ると、廊下の窓から外を見た。


その瞳には、決意の色が浮かんでいる。



―――待っているだけじゃ、何も変わらない。



フィオはもう一度深く息を吐くと、長く続く廊下を踏みしめた。