短剣と長剣は、リーチの差が大きい。


相手の一振りは、いとも簡単に、俺に届いた。


「………っ…!」


左目が、焼けるような痛みに襲われる。


思わず立ち止まりそうになったけど、歯を食いしばってそのまま向かって行った。


「なっ…、」


最後に見たのは、敵の驚きの表情だった。


俺は敵の胸に突き立てた短剣を抜くことなく、すぐにローアンに駆け寄る。


「ローアン…、ローアンッ!」


「………エ、ル…」


うっすらと瞳を開けたローアンは、苦しそうに息をしていた。


刃が貫いた腹部は、夥しい量の血が流れ、見ているだけで痛々しい。


「…お、前…目が…」


「俺の目なんかどーだっていい!」


本当は、叫びたいほど痛いし、出血がひどくて左目は開けられない。


それでも、弱音なんて吐く暇はなかった。


―――目の前で苦しんでいる育ての親が、何よりも大事だったから。