…いや、この短剣をくれたローアンが、俺を守ってくれたんだ。


「……ローアンッ…」


嬉しくて、今度こそありがとうと言いたくて、息を弾ませながら振り返る。


―――そして。


目に映った光景に、俺は一瞬呼吸を忘れた。



それはまるで、スローモーションのように、ゆっくりと。


ローアンの体が、力を失って倒れていく。


「え……?」


ほとんど空気のような、掠れた声。


何度瞬きを繰り返しても、目の前の光景は変わらなかった。


「―――ローアン!」


気付けば俺は、倒れているローアンに向かって駆け出していた。


その寸前で、誰かが俺の前に立ちはだかる。


「…やめとけ。コイツはもう助からねーよ」


「うるせぇ!退け!」


「戦いの最中に余所見したのが悪いんだぜ?バカだよなぁ」


「うるせぇっつってんだろ!」


俺は堪らずに、ローアンと戦っていた山賊の頭に斬りかかった。