特に、何かを考えていたわけでもなかった。


ただ…アイツの部屋に行かなきゃいかないような、そんな感じがしただけ。



気付けばもう、ちびっこの部屋は目の前にあった。


そんな自分に驚き呆れながらも、取り敢えず扉を叩く。


「……おい?」


軽く三回叩いてみても、返事はなかった。


眉をひそめつつ、もう寝てるのかと思ったその時。


…ほんの僅かに開く、扉に視線を奪われた。


「―――おい!」


躊躇いもせず扉を開ける。


案の定、鍵がかかっていない部屋には、ちびっこの姿は見当たらなかった。


「―――――…っ」


不審なところは、ない。それがかえって不審さを煽る。


争った形跡がないということは、自分から部屋を抜け出したか、あるいは誰かについていったか…


こんな大事な日に、いくらアイツでもそんなバカな真似するだろうか。



考えるより先に、足が動いた。


俺は階段を下ってロビーへと向かう。