言いたいことが伝わったのか、エルは意地悪く笑う。
「アスティの所に行こうとか、考えんなよ」
「…!し、しないよ!大人しくしてますっ」
流石に、宿を抜け出してまで、自分から危険な場所に行く気はない。
思わずムキになったあたしを、エルが満足そうに見ている。
「そりゃ良かった。もう面倒事はごめんだからな」
そう言って、エルは部屋へと消えた。
あたしは顔をしかめたまま、自分の部屋の扉を開け、中に入る。
決して綺麗とは言えないベッドに沈み込むと、窓の外に視線を向けた。
「…あと、ちょっとかぁ…」
日は沈み、少し陰る夜空に月が浮かぶ。
時計の針は、午後九時を示していた。
…アスティは、大丈夫なのかな。
この世界の現実を知っている人に会うのに、怖くないのかな…。
「強いから…きっと、平気だよね」
そうだ。アスティは、強い。


