これって、もしかしなくても…お姫様だっこ!?


「ちょ、エル…!」


「喋んな。傷口開くぞ」


サラッと恐ろしいことを言われ、あたしは口をつぐむ。


アスティの登場にビックリして忘れてたけど、今さら斬られた傷が痛んできた。



ちらりと見上げると、エルは何だよと言わんばかりに眉をひそめる。


「文句あんのか。お前が担ぐなって前に言ったんだろ」


「………」


前って…アスティのお城で、あたしを牢屋から連れ出してくれたときの話?


確かに、お姫様だっこにしろって言った気がするけど…でも!


「…ち、血が…」


ふと目に入ったのは、あたしの血。


右の腹部を斬られていて、お姫様だっこをしてくれているエルの服に、染み込んでしまっていた。


「血?…ああ、気になんねぇよ」


一瞬あたしの傷を見ると、エルはスタスタと歩き始める。


気になんないって…あたしが気にするんだけど。


それでも何だか嬉しくて、あたしは大人しくエルに運ばれることにした。


「エル、リオを連れて先に行ってて」


アスティはそう言うと、しゃがみこんだままの女の人と、人形のように固まっているおじさんを見る。