切っ先をエルに向けると、女の人はニヤリと笑った。
「…寧ろ、殺意さえ覚える」
一瞬、なにが起こったのか分からなかった。
気付けばあたしは地面に倒れていて、エルが隣で叫ぶ。
「おい、立て!」
ぐいっと腕を引っ張られ、今度は違う方向に倒れた。
砂埃が舞い、咳き込んだあたしの耳に、空を切る音が響く。
「へぇ、やるじゃないか」
その声に顔を上げると、目に映った光景にゾッとした。
エルの右手に、剣が刺さっていた……ように見えたから。
実際に剣は、エルの右手の手錠とぶつかっていた。
つまりエルは、剣を受け止めるために、右手の手錠を利用したってことで…一歩間違えれば、斬られていたかもしれないってこと。
「………っ、」
エルの名前を呼ぼうとして、やめた。
分かったのは、あたしがエルの邪魔でしかないということ。
「丸腰の相手に斬りかかって、楽しいのか」
「アンタ盗賊だろ?卑怯って言葉は友達じゃないのかい?」
「…っざけんな!」
腕の力で、エルは剣を弾き返す。


