緑色の瞳は、すぐに見開かれると思った。
今まで、エルの左目の傷跡を見た人の反応が、そうだったから。
…けど、違った。
「……くっ、くく…!」
洞窟内に響いた笑い声に、驚いたのはあたしだけじゃなかった。
おじさんはポカンと口を開けていたし、エルは眉間のシワがより深くなっていた。
「くくっ…あはは!なるほどね!」
可笑しそうに笑う女の人は、次の瞬間、エルの胸元を掴む。
「!」
至近距離でエルを見下ろす緑色の瞳は、獲物を捉えたかのように鋭かった。
「―――"月の咆哮"か」
クッと喉を鳴らすと、女の人はエルの胸元から手を離す。
エルは何も言わず、自分を見る冷たい瞳を睨んでいた。
「嫌になるね。その目。…ウザイったらありゃしない」
「………」
「言っとくがアタシは、あんたらを怖がったりしないよ。寧ろ…」
女の人は言葉を区切ると、腰にある剣の柄を掴む。
そのまま一気に鞘から引き抜くと、スラリと伸びる長剣が現れた。
その剣の切っ先が、炎に照らされて不気味に輝く。


