「お前が、闇取引の頭か」
低く唸るような声に、女の人はあたしの隣にいたエルを視線を向ける。
探るようにエルを見てから、綺麗に整えられた眉をひそめた。
「ガキが、大人に偉そうな態度取るもんじゃないよ」
「あん?テメェこそ…」
「ちょ、ちょっとエル!」
あたしがさっき怒鳴りたい気持ちを呑み込んだのに、その努力を無駄にする気なの!?
慌てるあたしを一瞬だけ見て、エルはすぐに女の人を睨み付けた。
その険悪な雰囲気に、もう嫌だと叫びたくなる。
「…カ、カンナ殿」
意外にも、ピリピリとした空気に割って入ったのは、冷や汗を垂らしたおじさんだった。
「実は、この小僧…高く売れると私は判断したのですが」
…ああ、何だ。
結局この人は、自分の身とお金を守りたいだけなんだ。
「高くぅ?そっちのお嬢ちゃんなら、マニア共に売れそうだけどね」
「い、いえ。カンナ殿なら、左目の傷跡を見ていただければ分かるかと…」
おじさんの媚びを売る声音に、嫌気が差す。
女の人の緑色の瞳が、顔をしかめるあたしから、睨みを効かせるエルへと移った。
「左目…」
その視線が、エルの瞳を捉える。


