いつだってエルは、意地悪で、嫌に自信たっぷりで。
でも、そんなエルに反発してたからこそ、あたしは自分を失わずにいれた。
広いこの世界に、取り残されたちっぽけなあたし。
泣いて、笑って、時には怒ったりしながら過ごせたのは、紛れもなく、エルとアスティ、それにクリスがいたから。
…エルの俺様な性格に、あたしは知らずに救われていた。
「エル」
「あん?」
「…やっぱ、何でもない」
口ごもるあたしに、エルは眉をひそめる。
お礼が素直に言えないあたしは、相当な意地っ張りだと自分でも思う。
その時、前を歩くおじさんの足が止まった。
つられて立ち止まると、目の前に聳え立つ絶壁があった。
「着いたぞ。中に入れ」
「中、に…?」
首を傾げると、絶壁に人が一人入れる隙間があるのが目に入った。
この中で、人の売り買いが行われてるの…?
「行くぞ」
「ちょっ…、」
躊躇うこともなく、エルがその中へと入っていく。
繋がれているあたしは、抗うこともできずに暗闇へと足を踏み入れた。
驚いたことに、絶壁の中は空洞になっていた。
壁際には一定の間隔で松明が置かれていて、妖しげに炎が揺らめいている。


