意気込んだはいいものの、馬車の速度が遅くなるにつれ、あたしの鼓動は速くなった。
「…もうすぐ着くな」
そんなエルの言葉に、余計に不安が募る。
―――無事に、逃げ切れるか。
そのことだけが、何度も頭を巡っていた。
数分後、馬車がゆっくりと停止した。
「…つ、着いたのかな。どうしよ、エル…」
「鬱陶しい。黙って俺に従え」
パシッとおでこを叩かれ、あたしは何とも言えない声を上げる。
その堂々とした態度を分けて欲しい!
荷台の扉が乱暴に開かれると、おじさんの顔が現れた。
「着いたぞ!降りろ」
エルの次に荷台から降りると、真っ赤に染まった空が目に入る。
どうやら、すっかり日が暮れてしまったらしい。
「着いて来い。変な真似はするなよ」
忌々しげにあたしたちを見ると、おじさんはすぐに背を向ける。
エルを見遣ると、肩を竦めて歩き出した。
「…エル」
小さい声で呼び掛けると、エルは前を向いたまま口を動かす。
「ここは閑散としすぎてる。…危険が多い」
その言葉を聞き、あたしは辺りに視線を走らせた。
荒れ地のような場所で、建物は全く見当たらない。


