「…は、上等じゃねぇか」
唇の端を持ち上げたエルは、楽しそうにあたしを見た。
「俺の全部なんか、アスティですらきっと知らねぇよ?」
「…ぜ、絶対聞き出してやるんだから!」
挑むようなあたしの視線を、エルは鼻を鳴らして撥ね付ける。
「へーえ?…まずはここを無事逃げられたら、何か教えてやんよ」
「え?」
思わぬ言葉に、瞬きを繰り返す。
何か…教えてくれるって言った?
「何かって、何?」
「別に何でも。お前が知りたい事」
アッサリとしたエルの態度。それでもあたしは、充分嬉しい言葉を貰えた。
「絶対、無事逃げ切る!」
身体を乗り出すと、手錠がカチャリと音を立てる。
「声でけぇよ、アホ」
張り切るあたしに、エルは苦笑しながら言った。
いつもより瞳が優しいのは、きっと気のせいじゃない。
―――まずは、ここから逃げ出さないと。


