大きく息を吐いてから、イーズくんはあたしに視線を向ける。
「君はさ、サイリアって国を知ってる?」
「…サイリア?」
「そう。僕たちの生まれ育った国だよ」
この世界の地理が分かるわけもないあたしは、横目でちらりとエルを見る。
あたしの視線に気付いたエルが、呆れ顔でため息をついた。
「…こっから、北西にある国だ。そう遠くねぇ」
「そっちの彼は知ってるんだね。…まぁ、最近は有名だからかもしれないけど」
自嘲するように笑うイーズくんを、ケルンさんが険しい表情で見ている。
「…有名、って?」
「サイリアは最近、ひどい干ばつに遭ってるんだ」
イーズくんより先に、ケルンさんがあたしの問いに答えた。
「農作物は大きな被害を受け、収入は激減。水は汲めず、喉を充分潤すことも出来ない」
苦しそうに顔を歪めるケルンさん。
二人を苦しんでいるのは、世界が傾いているからだ。
…早く。早く救わないと、傾くのは世界だけじゃなくなっちゃう。
「だから俺たちは、人拐いになった」
―――人が、道を踏み外してしまう。


