―――――…
すっかりと、日が暮れてしまった。
辺りは夕焼け色に染まり、気温も肌寒く感じるようになってきていた。
…あたしは相変わらず、さっきの場所から動けずにいた。
「………」
無意識に、ブレスレットを見る。
魔術…か。
どこの誰だか知らないけど、全く迷惑だった。
一体そんな迷惑な魔術をかけた人物は、何をしたかったんだろう?
―――『ようこそ、選ばれし者よ』
あの時、確かにそう言っていた。
選ばれたっていうか…あたしはただこれを拾っただけなのに。
もともとこのブレスレットを持っていたのは、黒猫だったのに…。
「選ばれし者…」
あたしは、静かにその言葉を繰り返した。
あたしを呼んだ誰かは、自分の元へ来いって言っていた。
つい逆らって、違う声がする方に行っちゃったけど。
あたしはそこへ行ったら、何を言われていたんだろう。


