特別な力もない。
何かをするわけでもない。
…じゃああたしは、何のために?
「異世界から呼ばれた人間が、この世界の為にすることは、ただ一つ。…その身を、捧げることです」
「………え」
「―――――生け贄に、なるのです」
一瞬、何を言ってるのか分からなかった。
あまり馴染みのない言葉を、声に出さずに繰り返す。
―――――イケニエ、に、なる…?
「―――っ、」
その意味を理解した瞬間、身体の芯まで冷えきった気分になった。
口の中が急に渇き、声が上手く出せない。
「…リオ!」
急に震え始めたあたしのそばに、アスティが駆け寄る。
でも今は、アスティに目を合わせることすらできない。
「リオ!……チェディ、何かの間違いじゃないの?」
「…いえ。認めたくありませんが、確かなのです。前回呼ばれた人が、生け贄となった瞬間を…私は、見ました」
「そんな…っ、」
アスティとチェディさんの声が、遠くに聞こえる。
もう嫌だ。何も考えたくない、聞きたくない―――…
「諦めんな」
不思議とその声は、しっかりとあたしに届いた。


