「兄さんが放っとかれてたのは、もうそれ以上、教えることがなかったからだよ」
紡がれた言葉に、目を見張った。
自分のずっと思っていたこととは違う答えに、戸惑いを覚える。
「兄さんの知識が、誰よりも優れていたから。だからみんな揃って、知識のない僕を必死で教育し始めたんだ」
「………」
「周りはそれを、僕に期待が集まったからだと言ったけど。そうじゃない」
オレと同じ紫色の瞳が、少しだけ細められた。
「―――期待されてたのは、兄さんだったんだよ」
何てオレはバカなんだろう、と思った。
自分だけがずっと、辛いと、孤独だと思い込んで。
本当に辛かったのは、デューイだったのに。
「…もうやめるんだ、デューイ」
静かな声が、部屋に溶け込むように響いた。
仕切られていたカーテンが、シャッと音を立てて開く。
「父さん…」
苦しそうな父さんの表情を見て、デューイもまた、苦しそうに顔を歪めた。
「…アスティの歩む道は、お前が決めることじゃない」
かつてのような元気はない。
それでも、父さんの声には、凛とした響きがあった。


