すっかりと日が暮れてしまった頃、俺は席を立った。
「…もう帰るの?」
「ああ。そろそろ帰んねぇと怒られっからな」
寂しそうなアスティの問いに、俺はそう答えた。
本当は、俺の帰りがどんなに遅くても、怒るやつなんか誰もいない。
帰る先は、適当に選んだ安い宿だ。
けどアスティや国王には、俺はこの国に住んでいると話した。
その方が、何も疑われずにいい。
「また、ぜひ来てくれ」
「…ありがとうございます」
俺は礼を言うと、国王に軽く会釈をした。
デューイが、「えー、エルもっと遊ぼうよー!」と口を尖らせる。
「また今度な、デューイ」
「ええー!」
「こら、デューイ。…エル、玄関まで送るよ」
もう一度礼を言ってから、俺はアスティと話しながら玄関へ向かった。
大きな扉の目の前で、アスティが足を止めて俺の名前を呼ぶ。
「エル。…今日は、ありがとう」
「や。俺も楽しかった」
まるで、俺も家族の一員になったような気分だった。
…家族なんて、俺自身がよく分かっていないくせに。


