盗賊の俺が、誰かに礼を言われるなんかほとんどない。
だから余計に、その言葉は胸に響いた。
…どーも。と短く言った俺に、アスティはクスクスと笑った。
「エルって、すごい逞しい考え方してるよね」
「…それは、褒めてんのか貶してんのかどっちだ」
「………褒めてる?」
「疑問系かよ!」
二人分の笑い声が、夜空に響く。
俺はずっと、自分が正しいと思って生きてきた。
自分が弱いと思ったことは何度もあったが、それを認めたのは過去一度だけだった。
自分の信じて進む道が、全てだと思っていた。
けど、アスティは違う。
自分の弱さを受け止めて、それでも負けずに進んで行く。
何度も後ろを振り返りながら、けど、確実に。
…それがどんなに、俺にとって難しいものなのか。
アスティは、俺にないものを持ってる。
だから、羨ましいと感じるんだ。


