チェディさんはアスティを見ると、「王子」と呼び掛けた。
「私から訊きたいことは、沢山あります。ですが…それは、国王様も同じでしょう」
「…うん」
「先ずは、国王様にお会いになってください」
アスティは緊張を隠しきれない表情で、ゆっくりと頷いた。
その時、部屋の扉が大きな音を立てて開いた。
「―――――兄様っ!?」
紫の瞳に、栗色のふわふわした髪の毛。
アスティにそっくりな男の子が、そこにいた。
「…デューイ?」
アスティが名前を呼ぶと、デューイと呼ばれた男の子は、瞳に涙を浮かべた。
「兄様…!アスティ兄様…!」
そのままアスティにがばっと抱きつくと、わんわんと泣き出してしまった。
…えっと、デューイって確か、アスティの弟さんだよね?
出来がいいって聞いてたから、もっとツンとしてそうなイメージだったけど…全然違う。
「大きくなったね、デューイ」
アスティは少し困ったような、でも嬉しそうな顔で、弟の頭を撫でた。
その光景を、チェディさんは呆れたように微笑んで見ていた。
「全く、デューイ王子…そう騒ぎ立てないでください」
「だって、だって兄様が帰って来たんだよ!」
潤んだ瞳で、デューイくんはアスティを見上げた。


