見れば見るほど、アスティは王子様に見えない。


なんて、失礼かもしれないけど。


栗色の髪はボサボサだし、紫色の瞳はどこか眠そうだし…


「王族に生まれたりすると、厳しい教育とか受けるんじゃないの?」


なんとなくそんなイメージがあって、あたしは訊ねた。


アスティは城下町を行き交う人々を眺めながら、うーん、と唸る。


「厳しかったかな、弟には」


「……弟?」


「うん、弟」


少しだけ微笑んで、アスティは続けた。


「デューイって言うんだけどね、オレの何倍も賢いんだ。だからデューイに期待が集まって、オレは放っとかれてたよ」


家族の話をするときのアスティは、どこか寂しそうに、でも嬉しそうにする。


その表情を見るだけで、少しだけ苦しくなるんだ。


「………怖い?」


小さく訊ねると、アスティが振り返る。


「優しいね、リオは」


そう言って、やっぱり少しだけ笑った。