何とか橋を渡りきった頃には、あたしの息は切れ切れだった。


隣で涼しい顔をしてるヤツをどうにかして欲しい!


「さて、入るかの」


扉を開けると、リビングに通じていた。


近くの階段を上がっていくと、突き当たりにひとつの部屋があった。


「…メルティ!私だ」


その扉を叩きながら、サムエットさんが姫の名前を呼ぶ。


けど、部屋の中から返事はなかった。


「メルティ!聞こえているだろ!?」


「…サムエット」


扉を叩くサムエットさんを、長老が手で遮る。


扉に向かって、長老は話し出した。


「メルティや、わしじゃ。髪飾りは無事取り戻したぞ」


優しい長老の声にも、反応はない。


それでも構わず、長老は続ける。


「髪飾りを取り返してくれた人間の方たちを、お連れしておる。会ってお礼を言ってはくれんかのう?」


何の前触れもなく、扉が小さく開いた。


そこから覗いたのは、くりっとした大きな紅い瞳。


「…人間…?」


その瞳は、伺うようにあたしたちを見つめた。