「…娘は、うちにはいない」


「へ?じゃあどこに…」


「姫専用の離れがあるのじゃよ」


長老はスッと立ち上がると、少し悲しそうに笑った。


「メルティはそこにおる。…行こうかの」





姫専用の離れは、長老の家から10分近く歩いた、大きな湖の真ん中にあった。


地面からその家までは、湖の上に架かる、枝で造られた橋を渡っていくみたい。


「お…落ちっ、落ちるッ!」


手すりに必死に掴まりながら、あたしは橋を渡っていた。


僅かな揺れでも、足を踏み外しそうになって怖い。


「早く行けノロマ」


「ぎゃーッ!押さないでよ!」


キッとエルを睨むと、対するエルはそっぽを向いた。


どうやら、長老の家でのあたしの態度が気に入らなかったらしい。


でもあれは、仕方なかったの。それに…


「自慢じゃないけど、あたし泳げないの!だからやめて!」


「本当に自慢じゃねぇな」


「何してんの二人共ー?先行っちゃうよ」


「ちょっ、だから押さな…ッ、助けてアスティー!」