「小人族は、もともと山奥にひっそりと住む種族じゃった。子孫を残すという意思は薄く、常に絶滅に近かったとも言える」
そう言われれば、確かにこの里には家が少なかった。
来た当初を思い出しながら、あたしはお茶をすする。
「通常の種族…例えば人間に比べれば、小人族は被害を受けやすかったのも、原因の一つじゃ」
「…被害?」
「そうじゃ。お主らにとっての小雨は、我々にとって大雨になる。また小さな風は強風となり、雪は吹雪となるのじゃ」
……そっか。
小人族はあたしたちより小さいから、些細な環境の変化が、大災害に繋がっちゃうんだ。
「じゃがな、それ以上に我々は、外界との関わりを望んだのじゃ。生き残る為には、殻に閉じ籠っていてはいけない、と」
ふう、と長老がため息をつく。
あたしの隣で、サムエットさんが唇を噛みしめていた。
「…外界との関わりは、上手くいっていた。人間からは食糧を分けてもらい、動物たちは足となってくれたのじゃ」
上手くいっているなら、どうしてそんなに悲しそうなんだろう。
その疑問は、長老の次の言葉で解決した。
「―――その一方で、我々を利用しようという輩が現れたのじゃ」
利用…?
「売ろうとしたんだ、私たちを」
今まで黙っていたサムエットさんが、吐き捨てるようにそう言った。


