ティナは黙って男の目を見る
その目は迷いのない決意した目
『なにか代金とかいるのか?いるなら…』
「無用です。そんなものいりませんよ。貴方の目…何もかも知っているのですね?」
『あぁ、ルリコフヌから聞いた。俺は今から禁忌を犯そうとしていることも』
人間を生き返らせる
つまり、ひとりひとりの決められた時間をいじること
未来を変えるのとはわけが違う
この世の最大の禁忌
「人を造るのとは違います。蘇生のまじないは不完全なものです。一時しのぎのものでしょう。そして使用者は何かしらの犠牲と大きな代償が伴います」
『間に合えば構わない。頼む、あんたしかいないんだ』
「……」
ティナは手を叩く
すると周りの景色が変わる
そこは何もないただの空間
「さぁ、目を閉じて。貴方にまじないをかけます。次に目を開くときは貴方が望む場所へ飛ぶことでしょう」
『…早く、早く。時間がない』
「焦らずに。貴方がここへ来るときにかかった時間は現代ではほんの2分ほどにすぎない」
ティナは言う
「この爪に塗られたハートの数は全部で10個。このハートが無くなるとき貴方はしかるべき場所へ還ることになります」
決してハートを無駄にしないで
そう呟き、カズマが目をあければ
目の前には愛しい人が泣いていた