焼きたてのパンの香りがたちこめる時刻、チェリザの街の上にある空にはひとりの天使が飛んでいた



ひとつ、不自然な雲の中にひとりの天使が入り込む


すぼぼっ…


「…こんにちはティナ」

「いらっしゃい」

「…雲の上にまで来るのだな」

「どうやら私を必要としているみたいですから」



ホグミルズ4丁目

不思議に金木犀の香のする雲の中には

綺麗な顔立ちの人間がいた



「…私がここに訪れた理由、わかっているのだろう」

「ルリコフヌが私のもとに訪れるのは珍しいですから」



ルリコフヌと呼ばれた天使はティナの前に手を差し出すと、ひとつの光が溢れ出す


「…昨日、天に昇る予定だった魂だ。名はカズマという。どうやらこの魂は強い未練があるらしく、昇るのを拒んでいる」

「カズマさん…ですか」

「聞いてやってくれないか」




ルリコフヌが呪を唱えると、光が大きくなりひとりの男の姿になる






男は喋りかける


『……お前がティナか』

「初めましてカズマさん」

『あんたにしか頼めないことがある』




男は静かに、だが強く言う


『…俺を生き返らしてくれないか』