指先の魔法




それからステラは毎日のように人間のもとへ通った


毎日、毎日、毎日…



「〜♪」

「美しい歌声ですね」

「ティナ!見て、珊瑚礁がもとに戻ったわ」

「とても心地好い音色です。珊瑚礁も喜びます」




ステラはいつしか失った声を取り戻し、人間へ聞かせるため毎日毎日洞窟へ通う



「なぜティナはここに住んでいるの?人間は海では息が出来ないと聞くわ」

「さあ、何故でしょう。貴女と過ごすのは楽しいですから」

「はぐらかすのね!それにここは不思議な洞窟ね。海の中なのに海じゃない…みたいな」

「感じ方は人それぞれですから」




通いつめているうちにステラの中では心の重りが取れていた

ステラはティナと過ごす時間が好きだった


「不思議な香りね。甘くて…潮の香りとは違う香り」

「海には馴染みのない香りですね。これは金木犀です。どうぞ、ソルトクッキーが焼けましたよ」

「この香り、嫌いじゃないわ。ありがとう!ティナはお菓子が好きね」

「嫌いですか?」

「まさか!大好きよ」



洞窟へ通い詰めるごとに、また地上へ行きたい気持ちがつのる。


ステラの中にあった人間不信はもう、カケラほどになっていた