命の花

「やっと来たか。イグニス・トゥルーズ」

 イグニスはその場に立っていられなかった。

 跪いてその名を呼んだ。

「ロージリール、様……!」

「わかってるのか? オマエはおれさまを選んだんだぜ」

あまりのことに震えるイグニスに、

「つまり、あなたさまは『あの場にいない、たった一人の風精』をお選びになったのです」

 そう言うと、黒髪の精霊はクッと唇の端を持ち上げた笑いをした。

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