命の花

 風に向かって見透かすと、ぽつん、とそこに何か見えた。

 暗闇の中、彼は水の入った水鏡盤をかき回していた。

 案内、と言った風精はそこで立ち止まった。

「あの水鏡は選ばれた二名が覗く新しい世界を映すもの」

「新しい……? 君は行かないんだね……?」

 振り返って見ると黒髪の風精は頷いた。

 イグニスが人影に近寄ると、不意に水面を叩いたしぶきが降りかかった。

 背を向けたままの影が呟き……いや、それははっきりとこちらに放った台詞だった。