彼女は何故喋らないのだろう?

そこが凄く気になって仕方なかった

だけど

触れない方がいい気がした

それは自分でもよく分からない

『?』

変な風に見られただろうか

沈黙が妙に長くなってしまった

何処かに焦点を定める訳でもなく

ぼーっとしていた

『あっ、ゴメン。ちょっと考え事してた』

彼女はニコッと笑った

笑窪がとても可愛い笑顔

吸い込まれそうな瞳

俺は背中に汗をかいていた

『俺の顔面白いかな?』

彼女は勢いよく首を横に振った

そしてまたニコッと笑った

メモを取り出してまた何かを書こうとしている

俺はチャンスと思い

勝負に出る事にした

『いいよ、口の動き読むから』

彼女はハッとしたらしい

二重の目がくっきりと開いて

シャーペンの手が固まっている

彼女はゆっくりと口を動かす


わたし

こえを

なくしたの


『声を無くした?』